2014年12月17日

季節が終わる

季節が終わる
晩秋の朝、公園の小路をたどると紅葉の始まった木々の葉が光を受けて錦織り成す。この光景を納めようと携帯のカメラシャッターを押してみるものの、目を見張る程の光の透明感を切り取ることは出来ず、足を止めて目に焼き付けるしかない。
風が青天井から妖精たちをひらり、はらはらと舞わすように降らし始めると、思わず手を挙げて受けてみるものの、さらりとかわされる。地面を埋め尽くす落ち葉は見事に同じ葉色は一枚もなく芸術家揃いである。
半日もすればちりちりと形も色も変えるのが分かっていてもポケットに入れて持ち帰る。毎日母へのおみやげにした頃を思い出し彼女の写真の前に飾る。「まあ、きれい」と母の声が後ろからしたような……。
生前母はうれしそうに眺めて、本の間に挟み押し葉にした。少し色あせてはいるが今も私の手元に残してある。
毎年秋のしつらえに玄関の下駄箱の上に虫かごと一緒に飾る。季節が終わるとチャック付きのビニール袋に入れて大切に仕舞っている。
今年も大銀杏の金色の絨毯もそろそろ終わろうとしている。
空を見上げると、葉陰の枝の間に作った鳥の巣があらわに見える。木は春のために日の光を貯めて冬を耐えるが、鳥たちは寒風にさらされて寒かろうと、手袋をしてポケットに入れた手を出しながら我が身と重ねる。
孫が遊びに来ると絵本を読んでくれとせがむ。娘が使った絵本の中からウクライナ民話の「てぶくろ」という話を読んで聞かせた。おじいさんが山で落とした手袋にネズミが暮らし始めカエルが仲間入りし次から次へと増えて最後には七匹もの動物が仲良く暮らすという話である。
先日、書店で同じタイトルの絵本を見た。仕掛け絵本で画家も違い主人公も男の子として描かれていた。手元にある本は
1965年版の本である。こちらも少々色あせてはいるが、やっぱり手放せない一品である。


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Posted by wushiki at 10:47 | Comments(0) | occur
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